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成果を最大化するBtoB営業のコツ12選とマインドセット

「毎日頑張っているのに、なかなかアポイント獲得に繋がらない…」

「提案まではいくものの、最後の最後で失注してしまう…」

BtoB営業の世界では、多くの営業担当者がこのような壁に直面しています。

もし、読者の皆様が、アポイントの獲得に苦戦していたり、商談の成約率を上げるために悩んでいるなら、この記事は課題を解決するためのヒントになるかもしれません。

本記事では、BtoB営業の基本的なコツから、トップセールスが実践する思考法まで、営業プロセスに沿って徹底解説します。小手先のテクニックだけでなく、顧客と長期的な信頼関係を築き、安定して成果を出し続けるための本質を説明してまいります。

そもそもBtoB営業とは?BtoC営業との3つの決定的違い

コツを学ぶ前に、BtoB(Business to Business)営業の本質を理解しておくことが重要です。個人顧客を相手にするBtoC営業との違いを意識することで、取るべき戦略が明確になります。

  • 意思決定プロセスの違い:BtoCでは購入者=決裁者ですが、BtoBでは商談相手(担当者)と決裁者(役職者など)が異なるケースがほとんどです。複数の関係者の合意形成が必要になるため、組織構造を理解した上でアプローチする必要があります。
  • 購買動機の違い:BtoCが「欲しい」という感情で動くことが多いのに対し、BtoBは「企業の課題解決に繋がるか」「費用対効果は合うか」といった合理的な判断基準が重視されます。ロジカルな説明と、導入効果の証明が不可欠です。
  • 関係性の違い:BtoCが一度きりの取引で終わることも多いですが、BtoBは製品・サービスの導入後からが本当のスタートです。継続的なサポートを通じて、顧客の事業成長に貢献する長期的なパートナーシップが求められます。

【プロセス別】BtoB営業を成功させる12のコツ

ここからは、営業活動のフェーズごとに、具体的なコツを解説していきます。

BtoB営業のコツ12選は、「リスト作成」「アポイント獲得」「」

成果を上げる土台となるのは、質の高いアプローチリスト(営業)作成からです。
自社の顧客となる企業が”どんな企業”で、”どこの部署の担当者”かなど、ターゲット像を書き出し、それを元にリスト作成を進めましょう。

リスト作成編

1. 効果的なリストを作成する実践的手法

<ターゲットの明確化>

まず、「自社にとって最も価値のある顧客は誰か?」というICP(Ideal Customer Profile:理想の顧客像)を作成します。これが営業活動全体の羅針盤となります。

表:ICP(理想の顧客像)の項目例

定義項目具体例
業界・業種SaaS業界、製造業、人材紹介業
企業規模従業員数:50〜300名、売上高:10億円以上
利用技術・ツールSalesforce導入企業、MAツール未導入
想定される課題営業部門の人材不足、マーケティングのDX化の遅れ
役職・部門営業部長、マーケティング責任者

ICPを明確にすることで、アプローチすべき企業が絞り込まれ、その後のメッセージの精度も格段に向上します。

<優良な情報からリストアップ>

ICP/ターゲットが決まったら、具体的な企業リストを作成します。重要なのは「鮮度」、つまり「今、課題感を抱えている可能性が高い」企業を見つけ出すことです。

下記のような情報ソースを元に「今、課題を抱えている企業」をリストアップしてきましょう。

情報ソースの例:

  • 業界ニュース: 「資金調達を実施」「新規事業を発表」といったニュースが出た企業は、新たな投資に積極的です。
  • 求人情報: 「営業マネージャー募集」といった求人は、組織拡大に伴う課題を抱えているサインかもしれません。
  • 競合他社の導入事例: 競合サービスを導入している企業は、その領域に課題意識がある証拠です。
  • 展示会やウェビナーの参加者リスト: 特定のテーマに関心を持つ、質の高い見込み顧客の宝庫です。

新規アポイント獲得編

質の高いリストができたら、いよいよアポイント(アプローチ)です。BtoB営業にとってアポイント獲得は最初の関門です。

多忙な担当者は、自分に関係ない連絡を無意識に無視します。その他大勢に埋もれないための接点作りのコツをご紹介します。

2. アプローチメッセージの作成

電話やメールでのアプローチを行う前に、ファーストコンタクトのメッセージについて熟慮する必要があります。

「新サービスのご案内」といった一方的に伝えるメッセージは、開封すらされません。重要なのは、「数ある企業の中で、なぜ”あなた”の会社に、”今”連絡したのか」という理由(Why you?)を明確に伝えることです。

  • 良い文例: 「御社のプレスリリースで拝見した『〇〇事業への進出』という目標に対し、弊社の△△というサービスであれば、□□の面で必ずお力になれると考え、ご連絡いたしました。」

相手のウェブサイトやIR情報、担当者のSNSでの発言まで読み込み、「あなたのことをしっかり理解していますよ」というメッセージを伝えましょう。

3. マルチチャネルからのアプローチ

電話やメール一辺倒では、なかなか捕まらない担当者もいます。相手企業の文化や業界の特性に合わせて、アプローチの手段を使い分けましょう。

  • 伝統的な企業や役職者向け: 丁寧な文面の手紙が、逆に新鮮で効果的な場合があります。
  • IT/Web業界の担当者向け: X(旧Twitter)やFacebookなどのSNSで有益な情報発信を続け、自然な形でリプライやDMを送るのも有効です。ただし、いきなり打ち合わせしましょう!提案聞いてくださいは嫌がられるので注意しましょう。
  • パートナー営業: 販売パートナーや代理店を通じての営業。パートナーが持っている独自の人脈などから商談に繋がることがある。ただし、トスアップや管理などコントロールしづらい点がある。

商談準備・リサーチ編

無事にアポイントが取れたら、商談の準備と相手先企業や対象企業の市場調査などリサーチを行います。商談の成果は、準備で8割決まるといっても過言ではありません。

4. 徹底した企業・担当者リサーチ

アポイント獲得時よりもさらに深く、企業と担当者をリサーチします。

  • 企業の「未来」を読む: 中期経営計画や決算資料、プレスリリースなどを読み解き、「この会社が1〜3年後に目指している姿」を把握します。その未来から逆算して、「今、どんな課題を抱えているはずか」という仮説を立てます。
  • 担当者の「人」を知る: キーパーソンのSNSや過去のインタビュー記事などから、その人の価値観や関心事、仕事へのスタンスを理解します。商談中のアイスブレイクや、相手に響く言葉選びのヒントになります。

商談のポイント:明確なゴール設定と仮説構築

その商談における「着地点」を明確に設定します。「何となく良い関係を作る」では不十分です。「課題の全体像をヒアリングし、次のプレゼンの約束を取り付ける」など、具体的なゴールを決めましょう。

ヒアリング編

商談の主役は営業担当者ではなく、顧客です。相手に気持ちよく話してもらうためのヒアリング術が鍵となります。

5. ヒアリングのスタンス

「御社の課題は〇〇ですよね?」と決めつけるのではなく、「〇〇について、現状はどのようになっていますでしょうか?ぜひ教えてください」というスタンスで臨みましょう。相手は専門家として尊重されたと感じ、心を開いてくれやすくなります。営業が話すのは1割、顧客が話すのが9割の状態が理想です。

6. 潜在ニーズを掘り起こす質問の仕方

顧客自身も気づいていない課題を言語化する手助けをします。

  • 例1:「もし、〇〇に関する業務時間を半分にできたら、新しくどんなことに取り組みたいですか?」
  • 例2:「3年後、事業部が目指す姿に対して、今一番のボトルネックになっているのは何だと思いますか?」

7. BANT条件を”確認”するのではなく”創造”する

BANT(Budget:予算, Authority:決裁権, Needs:必要性, Timeframe:導入時期)は、ヒアリングの基本フレームワークですが、単に確認するだけでは不十分です。対話を通じて、顧客と一緒に最適な条件を「創造」していく意識を持ちましょう。

  • 例: 「もしご予算が限られている場合でも、まずはスモールスタートできるプランもございます。一緒に最適な形を考えさせていただけませんか?」

提案・クロージング編

ヒアリングで得た情報をもとに、顧客の課題を解決する最適な提案を行います。

8. “機能”ではなく”価値(ベネフィット)”を語る

製品のスペック(機能)を羅列するだけでは、相手に響きません。その機能が、顧客のビジネスにどのような**価値(ベネフィット)**をもたらすのかを具体的に語りましょう。

  • 機能: 「このツールは、レポート作成を自動化できます。」
  • 価値: 「このツールを使えば、皆様が毎月10時間かけていたレポート作成業務から解放され、その時間をもっと戦略的な分析や企画業務に充てられるようになります。」

9. 費用対効果(ROI)をスライドで示す

特に決裁者は、投資に対してどれだけのリターンがあるかを最も気にします。複雑な資料ではなく、「この投資で、これだけのコストが削減でき、これだけの売上が見込めます」ということが、誰の目にも明らかな1枚のスライドにまとめましょう。

10. “検討します”を突破するテストクロージング

商談の最後に「検討します」と言われて終わってしまうのは避けたいところです。「もし仮に導入いただけるとしたら、何か懸念点やクリアすべき条件はございますか?」と、契約を前提とした質問を投げかけることで、相手の本音(予算、他社比較など)を引き出し、その場で不安を解消できます。

受注後・関係構築編

受注はゴールではなく、長期的なパートナーシップの始まりです。

11. 期待を超えるオンボーディング支援

製品・サービスを導入して終わり、ではありません。顧客がスムーズに活用でき、いち早く成果を実感できるよう、手厚いサポート(オンボーディング)を行いましょう。この初期対応が、将来の信頼関係を大きく左右します。

12. Giveを続ける情報提供とアップセル/クロスセル

直接的な営業活動以外でも、顧客にとって有益な情報(業界の最新トレンド、他社の成功事例など)を定期的に提供し続けましょう。そうすることで、あなたは「売り込みに来る営業」から「事業成長を助けてくれる頼れるパートナー」へと昇華します。その信頼関係の先に、自然な形での追加提案(アップセル/クロスセル)が生まれるのです。

【要注意】BtoB営業のNG行動3選

知らず知らずのうちに、顧客からの信頼を失う行動を取っていませんか?ここでは、特に注意すべき3つのNG行動を紹介します。

  • 「御社の課題は〇〇ですよね?」決めつけ営業
    十分なヒアリングをせず、自分の思い込みで話を進めるのは最悪です。顧客は「何も分かってくれていない」と感じ、心を閉ざしてしまいます。
  • レスポンスが遅い・報連相がない
    メールの返信が遅い、質問への回答がないなど、基本的なコミュニケーションの遅れは信頼を著しく損ないます。「誠実さ」はBtoB営業における最も重要な資質の一つです。
  • 自社の都合(ノルマ)を押し付ける
    「今月中に決めていただければ…」といった、こちらの都合を押し付けるクロージングは顧客の心象を悪くします。あくまで顧客の最適なタイミングを尊重する姿勢が大切です。

【思考法】成果を出し続ける営業の3つのマインドセット

最後に、小手先のテクニック以上に重要となる、トップセールスに共通する思考法をお伝えします。

  • 顧客の成功が、自社の成功(Customer Success)
    自分の売上目標のためではなく、「どうすればこの顧客はもっと成功できるだろうか」を常に考え、行動の起点にしましょう。その姿勢が顧客に伝わったとき、唯一無二の信頼関係が生まれます。
  • 自分をアップデートし続ける学習意欲
    市場やテクノロジーは常に変化しています。顧客の業界知識、競合製品の情報、新しい営業手法などを貪欲に学び続け、常に最高の価値を提供できる自分であり続けましょう。
  • 社内を巻き込む「チーム営業」の意識
    優れた営業は、決して一人では戦いません。技術的な質問はエンジニアに、専門的な資料作成はマーケティング部に協力を仰ぐなど、社内の専門家を巻き込み、組織の総合力で顧客と向き合います。

まとめ

BtoB営業は、単にモノを売る仕事ではありません。顧客の課題に深く入り込み、その成功を共に実現していく、非常にクリエイティブでやりがいのある仕事です。

今回ご紹介した12のコツと3つの思考法は、すぐに実践できるものから、意識し続けることで身につくものまで様々です。まずは次の商談で、ヒアリングの際に「魔法の質問」を一つだけ試してみるなど、小さな一歩から始めてみてください。

その小さな変化の積み重ねが、やがてあなたを「成果を出し続ける営業」へと導いてくれるはずです。この記事が、あなたの営業活動のヒントになれば幸いです。