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地方自治体営業

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自治体営業の流れを徹底解説!予算獲得から入札・契約までの5ステップ

「自治体(官公庁)との取引を始めたいが、何から手をつければいいかわからない」

「民間企業への営業と同じやり方でアプローチしているが、成果が出ない」

もしあなたがこのように感じているなら、それは「自治体営業特有の流れ(ルール)」を知らないだけかもしれません。

自治体ビジネス(B2G)は、約25兆円とも言われる巨大市場であり、一度信頼を得られれば継続的かつ安定した売上が見込めます。しかし、その営業プロセスは民間企業(B2B)とは根本的に異なります。

本記事では、自治体営業で成果を出すために必須の「年間スケジュールの把握」から、「案件化から契約までの具体的な5つのステップ」まで、専門的なノウハウを交えて徹底解説します。

なぜ「流れ」が重要なのか?民間営業との決定的な違い

自治体営業において、最も重要なキーワードは「予算」です。

民間企業であれば、「良い提案」があれば期中でも予算を捻出して決裁が下りることがあります。しかし、自治体では「事前に予算化されていないものは、原則として1円も使えない」という鉄則があります。

つまり、自治体営業の正解は、「来年度の予算を確保してもらうための活動」を、正しい時期に行うことにあります。このタイミングを逃すと、どんなに素晴らしい商品でも、チャンスは1年後まで巡ってきません。

【図解】自治体営業の年間スケジュール(4つのシーズン)

自治体の会計年度は、原則として4月1日から翌年3月31日です。このサイクルに合わせて営業活動を行う必要があります。

時期自治体の動き営業マンがやるべきこと重要度
4月〜6月新年度開始・人事異動直後【情報収集・挨拶】
担当者の特定、課題のヒアリング、関係構築
★★★
7月〜9月来年度予算の概算要求作成【提案の山場】
予算見積もりの提出、仕様書への反映依頼
★★★★★
10月〜12月予算の査定・調整【後押し・待機】
追加情報の提供、議会動向のチェック
★★
1月〜3月予算決定・入札公示【入札・契約】
入札参加、仕様書の確認、応札
★★★★

この表の通り、勝負は「夏(7月〜9月)」に決まります。ここで担当者に「この事業には予算が必要だ」と思わせ、見積書を受け取ってもらえなければ、翌年の仕事は発生しません。

自治体営業の具体的な流れ:成功への5ステップ

ここからは、実際の営業プロセスを5つのステップに分けて解説します。

STEP 1:ターゲット選定と入札参加資格の取得

まず最初にやるべきは「入札参加資格」の取得です。これがないと、そもそも土俵に立てません。

  • 入札参加資格審査申請: 各自治体のホームページや「統一資格審査(国の機関用)」を確認し、登録を行います。定期受付と随時受付があるため、期限に注意しましょう。
  • ターゲット自治体の選定: 自社の商材が「どの課」で使われるのかをリサーチします(例:防災アプリなら防災課、教育ツールなら教育委員会など)。

STEP 2:プレセールス(課題ヒアリングと種まき)

時期:4月〜6月

予算が決まっていない時期こそ、営業のチャンスです。

  • テレアポ・訪問: 「新商品のご案内」ではなく、「他自治体の成功事例情報の提供」というスタンスでアポイントを取ります。
  • ヒアリング: 現在の業務における課題を聞き出します。「現状のシステムで困っていることはないか?」「市民からどんな要望が来ているか?」を探ります。

STEP 3:提案・予算取り(仕様書作成のサポート)

時期:7月〜9月(最重要フェーズ)

担当者が来年度の予算要求書を作るタイミングに合わせて、自社の強みが活きる提案を行います。

  • 見積書の提出: 予算要求には「根拠となる見積もり」が必要です。参考見積もりとして積極的に提出しましょう。
  • 仕様書の素案提供: 自治体職員は多忙であり、専門分野のプロではありません。「仕様書(どのような要件で発注するか)」の作成に悩んでいる場合が多いため、自社に有利かつ公平性のある仕様書の素案(ドラフト)を提供し、サポートします。

【プロのポイント】

ここで「自社しかできないスペック」を盛り込みすぎると、特定の業者との癒着を疑われます。「公平性を保ちつつ、自社の強みが必須条件となるようなロジック」を組み立てるのが腕の見せ所です。

STEP 4:入札・プロポーザルの実施

時期:2月〜3月(案件によっては10月頃〜)

予算が議会で承認されると、正式に案件として公示(Webサイト等で発表)されます。

  • 案件公示のチェック: 狙っていた案件が出たら、すぐに仕様書をダウンロードし、内容を確認します。
  • 質疑応答: 仕様書に不明点がある場合は、必ず質問期間内に質問書を提出します。
  • 応札・プレゼン:
  • 競争入札: 価格勝負です。最低制限価格を割らないよう注意しつつ入札します。
  • プロポーザル: 企画提案勝負です。価格だけでなく「実施体制」「独自の工夫」「地域への貢献」などが評価されます。

STEP 5:契約・納品・実績作り

時期:4月以降

落札できれば、晴れて契約となります。

  • 契約締結: 必要な書類を提出し、契約を結びます。
  • 納品・業務実施: 仕様書通りに確実に業務を遂行します。
  • 実績の活用: 自治体の仕事は「実績」が次の信頼を生みます。「〇〇市で導入実績あり」という事実は、近隣自治体への強力な営業カードになります。

知っておくべき4つの契約形態

流れを理解する上で、ゴールとなる「契約の形」を知っておくことも不可欠です。

  1. 一般競争入札: 条件を満たせば誰でも参加できる最も一般的な形式。基本は「価格」で決まる。
  2. 指名競争入札: 自治体から指名された企業だけが参加できる形式。実績や信頼が必要。
  3. 随意契約(随契): 入札を行わず、特定の企業と直接契約する形式。少額案件や、緊急時、著作権が絡むものなど限定的。
  4. プロポーザル方式(企画競争): 価格ではなく「提案内容」で選ぶ形式。コンサルティング、ITシステム、イベント運営など、質が問われる案件で増加中。

※近年は「価格競争」による品質低下を防ぐため、プロポーザル方式を採用する自治体が増えています。

自治体営業で「勝ち抜く」ための3つの鉄則

最後に、ライバルに差をつけるためのポイントをお伝えします。

1. 「キーマン」を見極める

窓口に出てくる担当者が決裁権を持っているとは限りません。課長や係長、あるいは実務を握っているベテラン職員など、誰が実質的な決定権を持っているかを見極め、その人に響く提案をする必要があります。

2. 地域の総合計画(施策)を読み込む

各自治体には「総合計画」という、向こう数年間の市政方針をまとめた資料があります。そこに「DXの推進」「子育て支援の強化」などのキーワードがあれば、そこには予算がつきやすい傾向があります。提案書には、これらの方針に沿った内容であることを明記しましょう。

3. 他自治体の事例を徹底的に使う

自治体職員は「前例がないこと」を嫌い、「他でもやっていること」を好みます。「隣のA市でも導入され、業務時間が20%削減されました」という事例は、どんなに立派な機能説明よりも強力な説得材料になります。

まとめ:自治体営業は「農耕型」のビジネス

自治体営業の流れを一言で言えば、「春に種をまき、夏に育て、冬に耐えて、春に収穫する」という農耕型のプロセスです。

  1. 春(4-6月): 関係構築と課題発見
  2. 夏(7-9月): 予算化への提案(最重要!)
  3. 冬(10-1月): 予算成立待ち
  4. 春(2-3月): 入札・契約

このサイクルを無視して、闇雲に飛び込み営業をしても成果は出ません。しかし、正しい時期に正しいアクションを起こせば、中小企業であっても大手企業に勝てるチャンスが十分にあります。

まずは、自社のサービスが自治体のどの部署の課題解決になるのか、ターゲット選定から始めてみてはいかがでしょうか。